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葡萄の接木実施例


色々な果樹の接木を行って来ていますが、葡萄の高接ぎは少々難しい部類に入るようで、入手する穂木の内容や目的により、幾つかの方法うぃ使い分けて実施する事が必要と判断しています。これまでの経験から葡萄の接木が簡単でないのは以下の理由によるようです。
@枝を切ったとき樹液が大量に出る時期があり、接ぎ穂の採取時期と接木の時期の見極が単純ではない
A台木が固く、又充実した穂木は太くなりがちで、接木の作業自体が難しい
B樹勢のバランスが崩れ易く、負け枝になり枝ごと枯れてしまう事も多い。
Cせっかく接木した芽が伸びても、登熟しないで枯れてしまう事も多い
一方、このような点を上手く解決出来れば、短期間でで立派な実を付ける枝に成長させる事が出来るという特性も持っており、安定した接木を実施出来るよう、可能な方法と多めの実施例を載せて見ました。

葡萄の接木は、以下の方法で行う事が可能ですが、現状はC緑枝へ休眠枝を接ぐ方法を最も多用し、多品種接ぎの枝の整理・統合などの為A休眠枝接ぎも利用しています。

@呼接ぎ
A緑枝接ぎ(緑枝へ緑枝接ぎ)
B休眠枝接ぎ(宮式及び切接ぎ)
C緑枝へ休眠枝接ぎ


@呼接ぎ

新鞘同士を削り、削った部分をお互いに密着して縛っておくという手法です。初心者でも成功の確率が高い方法であり、宮菜園でも最初にこの方法で接木しました。それほど細心の注意が必要ではありませんが、お互いまだあまり固くなっていない新鞘の葉の付いた節の部分を削って付ける様にすると良い様です。尚、実施例の写真ではポリテープで縛っていますが、収縮性のある接木テープで縛ると縛ったくびれが残りにくくなります。呼び接ぎで一番失敗の可能性が高くなる要素は、台木と穂木いずれかの登熟に失敗すると言う事の様です。両方とも秋にしっかり登熟する様、日当たりを良くし、頂芽部分に近い条件の良い新鞘どおしを利用すると良い様です。

葡萄の呼び接ぎ - 2001年5月27日撮影
新梢同士の表皮を削り、削った部分を密着しておく接木の手法です。一番簡単な初心者向きです。


A葡萄の緑枝接ぎ


緑枝接ぎは、比較的簡単に接木出来、しかも成功率が高いので、宮菜園では一番多く用いている手法です。呼び接ぎと異なり同時に同じ場所に植えてある必要も無いので、知人から枝を譲り受けたり、自由な位置に接木したりすることが可能です。欠点は長距離(長時間)の輸送が出来ないという点であり、輸送に時間がかかるような場合、一旦休眠枝を接木し、その苗から成長した枝を利用様な手間が必要になります。緑枝接ぎは、新鞘が勢いよく伸びる4月中旬〜6月下旬位まで可能ですが、遅くなると接ぎ穂に被せたポリ袋の中が高温になりすぎ枯れ易くなるほか、その後の成長期間も短いので失敗の可能性が高くなります。
以下に緑枝接ぎの手順と実施例を載せてみました。

@台木を新鞘先端のなるべく柔らかい位置でカットし、穂木を差し込む為の切込みを入れます。ただし、台木は柔らかい先端の方が活着が良いのですが、先端は細いので台木の太さに合わない場合もあり、軟らかすぎると接ぐときに折れてしまう事がありますので、葉が通常の三分の一から二分の一位のサイズになっている部分が最適の様です。 A台木に差し込む様穂木を削ります。穂木は少し固く成り始めた部分を使用します。葉の間に見えている副芽が成長するわけですが、副芽が伸びすぎている場合、芽が枯れてしまう確率が高くなり、再度副芽が出来てから成長することになり、結果的に芽が成長するのが遅くなりがちです。概ね副芽は小さい方が成績は良い様です。

B台木に穂木を差し込みます。 C接木テープで穂木と台木を結束します。

D接木部にポリ袋を被せ乾燥を防ぐようにします。ポリ袋の中に台木の葉を1枚含めると常に湿度が高く保てるようです。尚、水分の蒸発により水が溜まるので、、ポリ袋には小さ目の穴を開けておきます。 E上手く活着すれば、接木後3週間位で穂木の芽が展葉を開始するので、ポリ袋を取り省きます。この写真の例では、4月28日に接木して5月25日にポリ袋を取り除きました。ポリ袋を取り除くのは夕方か曇又は雨の日に行い、急激な乾燥を避ける様配慮します。


ネオマスカットの緑枝接 - 2007年6月17日撮影
5月下旬に、割り接ぎを行い、覆っていたポリシートをはずしたところです。これからの伸びはそれほど期待出来ないですが、活着は極めて容易です。
ネオマスカットの緑枝接その後 - 2007年12月9日撮影
接ぎ穂もしっかりと登熟しましたので、接木は成功です。。

ロザリオビアンコの緑枝接最終 - 2007年12月9日撮影
緑枝接ぎでしたが、台木と同じ位の太さの枝に育ち、完全に登熟していますので、来年は実が期待出来そうです。
ブラック三尺の緑枝接 - 2007年12月9日撮影
台木の部分までは登熟しましたが、接いだブラック三尺は緑色のままであり、登熟していません。登熟しないと、冬の間に枯れてしまいますので、接木は失敗の可能性があります。最終的にこの部分は登熟せず春に芽が出ませんでした。

察記録− 2018年6月13日 葡萄の緑枝接

B休眠枝接ぎ:

休眠枝接ぎは、2月頃までに採取した穂木を、切ったときに台木の樹液が出なくなる(又は樹液が速やかに出なくなる)5月ころに接ぐ方法です。宮式及び切接ぎで行う事ができます。

甲斐路の休眠枝接 - 2007年6月17日撮影
5月中旬に、昨年の新鞘に宮式で接ぎ、発芽までポリシートで覆っていたものです。枝の先端に接いだので新鞘の勢いが良い。
デラウェアの休眠枝接 - 2007年6月17日撮影
5月中旬に、昨年の新鞘に宮式で接ぎ、発芽までポリシートで覆っていたものです。枝の途中に接いだためか新鞘の勢いがまだ弱い。

甲斐路の休眠枝接その後の様子 - 2007年7月16日撮影
前回撮影から1ヵ月が経過し、約2m伸びました。
バッファローの休眠枝接 - 2007年6月17日撮影
5月中旬に、昨年の新鞘に宮式で接ぎ、ポリシートで覆わなかったものです。発芽が遅い上枝の根元の方に接いだのでようやく展葉を開始したところです。

甲斐路の休眠枝接最終 - 2007年12月9日撮影
2箇所とも完全に登熟して完全な成功例です。

休眠枝接ぎの傾向及び注意事項は以下様なものでした。

*前年長く枝が伸びる様な樹勢の強い枝は成功率が高い
*実成りの影響により、新鞘の伸びが落ちるような枝の成功率は低い
*ポリ袋を被せた方が早く芽が出てそ後の成長も早い様である
*宮式では、一枝に2箇所以下位の接木が望ましい。
B枝ごと枯れてしまわないよう、台木の新鞘もある程度残す。

観察記録− 2009年6月15日〜 葡萄接木の状態


C緑枝へ休眠枝接

緑枝接ぎと同じ様な方法ですが、穂木に今年伸成長した新鞘の代わりに、休眠枝を使用する手法です。穂木を早めに採取し保存しておける便利差があり、輸送や保存性のうえで有利な手法です。

穂木の準備- 2021年5月2日撮影
穂木を5〜7cm位カットします。左側が根元、右側が先端です。右端に発芽様の芽が付いています。カットしたさい、先端、根元側とも枯れや腐敗等が無いことを確認します。
穂木加工1- 2021年5月2日撮影
穂木を形成層よ少しだけ深く削ります。良く切れるカッターナイフなら、一度でいっきに削れます。

穂木加工2- 2021年5月2日撮影
同様に、先ほど削った反対側を形成層よ少しだけ深く削ります。その後根元側を斜めにカットします。台木側が固めの場合、もう少し斜めの部分を大きく取ったほうが良いかもしれません。
台木側の新鞘- 2021年5月2日撮影
台木側の新鞘の状態です。

台木新鞘カット- 2021年5月2日撮影
台木側の新鞘の接木部をカットします。カットする位置の太さにより、適当な穂木の太さも異なりますので、予め、台木の接ぐ位置の太さと穂木の太さは目測で選んでおく必要があります。
穂木の差込- 2021年5月2日撮影
台木側の新鞘に切り込みを入れ、穂木を差し込みます。
新鞘の切り込みは、穂木を斜めにカット方を薄めにしたほうが、密着や結束が少し楽になります。ただ、台木側の新鞘が柔らかい場合、折れ易くなりますので、柔らかい場合、切込みを中間にするほうが無難です。

メデールを巻く- 2021年5月2日撮影
メデールを巻いて穂木を密封状態とします。
接木テープを巻く- 2021年5月2日撮影
接木テープで完全に密着するようにします。
尚、最初に接木テープで密着しながら、穂木の芽の部分を除いて密着させ、後で芽の部分だけメデールを巻いても大丈夫です。

表示- 2021年5月2日撮影
忘れない様、接木した品種と日付けを記載したラベルを貼って完了です。
接木の経過等- 2021年5月2日撮影
穂木が良好で、台木側の勢力が強ければ、概ね2週間位でメデールを突き破り芽が動きだします。通常はこのまま葉が出て枝が伸びだしますが、湿度が低く日光が強かったり、乾燥して新芽の勢いが弱くなる様な気候の場合、このまま成長が止まってしまう事があります。より確実に接木を成功させる必要がある場合、乾燥防止の為ポリ袋を被せたり、しばらく影を作り日光を遮断すると接木の成功率は上がります。

接木の経過等- 2021年5月16日撮影
活着すれば、接木後約1ヶ月で葉が2,3枚出て成長を開始します。この状態で葉への日当たりを確保し、他の枝へ実を着けすぎない等、接木した枝の勢力を確保すれば、枝の登熟が正常に行われ、来年又は再来年に実を着ける様になります。

用具- 2021年5月2日撮影
今回した用具です。左から油性ペン、黄色のビニールテープ、メデールと接木テープ、Sサイズのカッターナイフ、剪定バサミです。

2021年5月16日更新: 緑枝へ休眠枝接ぎの経過の画像追加
2021年5月3日更新: 緑枝へ休眠枝接ぎの説明追加
2019年9月1日更新

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